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BLOG · AI入門・生成AIの仕組み
LLM(大規模言語モデル)の動きをアニメーションで理解する
ChatGPTやClaudeの中身は「次に来る言葉を、確率で予測して足していく」仕組み
公開日 / 著者 富田 良治(TITC合同会社 代表社員)
ChatGPT・Claude・Geminiなどの生成AIの中で動いているのは、LLM(大規模言語モデル)と呼ばれる仕組みです。やっていることは、実は一つだけ。「ここまでの文章の、次に来そうな言葉」を確率で予測し、選んだ言葉を1つ足すことを、何度も繰り返しています。下のデモで、その1回分の流れを、順番に見てみましょう。
動かして確かめる
はじめに文の出だし(プロンプト)を選び、「1ステップ進む」を押してください。文が言葉の箱に区切られ、数字に変わり、言葉どうしが注目し合い、次の言葉の候補が確率で並び、1つが選ばれて文に足されます。「再生」を押すと、「。」が出るまで自動で繰り返します。
これは仕組みを説明するための小さな模型です。本物のLLMではありません。ここに入っているのは数十文ぶんの短い例文だけで、言葉の予測は「例文の中で、この並びの次に何が来たか」の数え上げです。本物は、インターネット上の膨大な文章から学んだ巨大なものです。外部のサービスにはつながっていません。
- ① 区切る
- ② 数字にする
- ③ 注目する
- ④ 予測する
- ⑤ 選ぶ
- ⑥ 足す
「再生」か「1ステップ進む」を押してください。
できあがった文: (足した回数 0 回/温度 0.7)
箱=トークン(言葉の部品)/箱の下の数字=番号(ID)/色の帯=数字の並び(青+、赤−)/金色の線の太さ=注目の強さ/棒=次の言葉の確率
温度を変えると、④の棒グラフの形が変わります。0に近いほど一番上の棒だけが突出し(尖る)、大きいほど棒の高さがそろい(平らになり)、意外な言葉も選ばれやすくなります。
何が起きているのか:区切って、数字にして、注目して、確率で選ぶ
LLMは、文を1つ作るために、次の流れを何度も繰り返しています。
- 区切る(トークン化):文を「トークン」という言葉の部品に区切り、一つひとつに番号(ID)をつけます。コンピューターは言葉そのものではなく、番号で扱います。
- 数字の並びにする(埋め込み):各トークンを、数十〜数千個の数字の並び(ベクトル)に変えます。意味の近い言葉ほど、似た数字の並びになるように作られています。デモでは色の帯がこれです(模型なので数字は6個だけです)。
- 注目する(アテンション):いま予測したい位置の言葉が、それまでの言葉のどれを重く見るかを計算します。「これまでの文脈のどこが大事か」を選ぶ仕組みで、デモでは線の太さで示しています。デモの注目の強さは「見せるための計算」で、予測の数え上げには使っていません。本物では、この注目の結果が予測そのものに効いています。
- 次の言葉を予測する:次に来る候補すべてに、確率をつけます。デモの棒グラフがこれで、足すと100%になります。
- 選ぶ(サンプリング):確率にしたがって、サイコロを振るように1つ選びます。確率の高い言葉が選ばれやすいだけで、低い言葉が選ばれることもあります。
- 足して、繰り返す:選ばれた言葉を文の末尾に足し、①に戻ります。「。」などの終わりの印が選ばれるか、長さの上限に達したら止まります。
LLMが長い文章を書けるのは、この「1語足す」を何百回、何千回と繰り返しているからです。途中で先の内容を全部決めているわけではなく、1語ごとに「ここまでの文章の続き」を予測しています。
温度とは:答えのばらつき具合
④で出た確率に「温度」をかけると、棒の高さの差を調整できます。温度が低いと、一番確率の高い言葉に集中し、毎回ほぼ同じ文になります。温度が高いと、確率の低い言葉も選ばれやすくなり、文が多彩になる反面、おかしな言葉の組み合わせも出ます。デモで温度を0と1.5にして、何度か「もう一度生成」を押して比べてみてください。0では毎回同じ文、1.5では毎回違う文になるはずです。
実際のAIサービスでも、事実を正確に答えさせたい場面では低め、アイデア出しでは高めに設定されることが多くあります。
本物のLLMは何が違うのか
- 学習のしかた:本物は、インターネット上の文章や書籍などの膨大な文章で「次の言葉当て」を繰り返して育ちます。予測が外れるたびに、内部の数字(重み)を少しずつ直していきます。この「外れ具合を見て直す」仕組みは、ニューラルネットワークの動きで動かして確かめられます。
- 規模:このデモの語彙は数十語です。本物は語彙が数万〜数十万、内部の数字(パラメータ)は数十億〜数兆個と言われる規模です。
- アテンションを何十層も重ねる:このデモのアテンションは1回だけです。本物は、これを何十層も重ね、さらに同時に何十通りもの見方(マルチヘッド)で文脈を読みます。この構造が「トランスフォーマー」で、現在の生成AIのほとんどが採用しています。
- 数え上げではなく、学習した計算:このデモは例文の数え上げですが、本物は膨大な数字の計算で確率を出します。そのため、見たことのない並びの文でも、もっともらしい続きを出せます。
使うときの注意点
- もっともらしい嘘(ハルシネーション)が出ます。LLMは「正しいこと」ではなく「ありそうな続き」を確率で選んでいます。デモでも、温度を上げると、文法はつながるのに意味のおかしい文が出ます。本物は精度がはるかに高いものの、数字・固有名詞・法律や制度の内容は、事実の確認が欠かせません。
- 学習した時点より後の出来事は知りません。最新のニュースや、直近の制度改正、自社の最新の価格表などは、検索機能の併用や、資料を渡して読ませる使い方が必要です。
- 一度に読める長さに上限があります(コンテキスト)。入力と出力を合わせて扱える長さに限りがあります。長い資料は、前半を忘れたり、途中の内容を取りこぼしたりすることがあります。
- 同じ質問でも、答えが毎回変わることがあります。確率で選んでいるためです。毎回同じ形で出したい業務では、出力の形式を指定する、人が確認する、といった工夫が要ります。
- 機密情報や個人情報の入力には注意が必要です。サービスの設定や契約によって、入力内容の扱いが変わります。取り扱いの考え方はAIへの入力で情報が漏れる?で整理しています。
中小企業での使いどころ
「それらしい文章を素早く作る」「長い文章を整理する」場面に向いています。たとえば、次のような使い方があります。
- 文章の下書き:お礼のメール、案内文、SNS投稿、求人文などの叩き台を作る。
- 要約・整理:会議のメモや長い資料から、要点や論点を抜き出す。
- 問い合わせの一次対応案:よくある質問への返信文の案を作り、担当者が確認して送る。
- アイデア出し:キャンペーン名、商品の紹介文、研修の進め方などを、複数案出してもらう。
いずれも、最終的な確認と責任は人が持つことが前提です。「下書きは速く、確認は人が丁寧に」と分けると、失敗が少なく、効果が出やすくなります。
富田 良治(とみた よしはる)
TITC合同会社 代表社員
AI経営コンサルタント。中小企業診断士・ITストラテジスト。元ITエンジニアで駄菓子屋オーナー。 プロフィールを見る