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BLOG · AI入門・AIエージェントの仕組み

AIの意思決定モデルの動きをアニメーションで理解する

「選択肢を並べ、結果を見積もり、評価して選ぶ」流れを、期待値と試行錯誤の2つで確かめる

公開日 / 著者 富田 良治(TITC合同会社 代表社員)

AIエージェントが動くとき、中では「次に何をするか」を選ぶ処理が繰り返されています。その考え方が意思決定モデルです。状態を見て、選択肢を挙げ、結果を予測し、評価して、選ぶ。この記事では代表的な2つ、期待値で選ぶ(1回の判断)と、試行錯誤で学ぶ(強化学習、連続した判断)を、動かして確かめます。

動かして確かめる:期待値で選ぶ(1回の判断)

お店の来月の打ち手を、AIが選ぶ場面です。「1ステップ進む」を押して、①〜④を順に見てください。そのあと「リスクの好み」と「景気の見通し」を切り替えると、選ぶ答えが変わることがあります。

デモ1 期待値で選ぶ(利益の単位は万円)

  1. ① 選択肢を並べる
  2. ② 結果の確率と利益
  3. ③ 確率×利益を足す
  4. ④ 一番大きいものを選ぶ
「1ステップ進む」か「再生」を押してください。

枝の太さは確率です。「期待値」は、確率と利益を掛けたものを結果ごとに出して、足したものです。景気の見通しは、「客が増える」確率と「客が減る」確率を入れ替えます。

動かして確かめる:試して学ぶ(連続した判断)

倉庫で、配達ロボットが荷物置き場(ゴール)まで荷物を運びます。ロボットは地図を持たず、動いてみた結果の得点(報酬)だけを頼りに、少しずつ上手になります。これが強化学習の一つ、Q学習です。「再生」を押して、ロボットの動き、マスの色、矢印の変化を見てください。

倉庫の地図(ロボットは、動いた結果の得点だけで学びます)

黄色い四角=ロボット/青いマス=先で得点が見込める場所/赤いマス=減点が見込まれる場所/矢印=今いちばん良いと思っている向き

挑戦ごとの得点(点=1回の挑戦、黄色の線=直近10回の平均)

得点=歩くたびに−1、減点マスで−20、ゴールで+50。少ない歩数で、減点マスを避けて着くほど高得点です。

いまの様子

「再生」か「1歩進む」を押してください。
挑戦した回数:0 回/直近の得点:-/直近20回の平均:-

「探索」は、あえてランダムに動いてみること、「活用」は、今いちばん良いと思う向きに進むことです。εは、探索する割合です。最初は迷い続けますが、学習が進むと、棚と減点マスを避けた最短に近い道を選ぶようになります。

何が起きているのか:見て、挙げて、見積もって、選ぶ

意思決定モデルとは、「いま何をするか」を選ぶまでの筋道を、数字で表したものです。どんな形でも、おおむね次の流れになります。

  1. 状態を見る:いまの状況をつかみます。デモ1なら来月の景気の見通し、デモ2ならロボットがいるマスです。
  2. 選択肢を挙げる:取れる行動を並べます。値下げ・据え置き・広告、あるいは上下左右の4方向です。
  3. 結果を予測する:それぞれの行動で、何がどのくらいの確率で起きそうかを見積もります。
  4. 評価する:結果を点数に直して、行動ごとの価値を出します。
  5. 選ぶ:価値がいちばん高い行動を選びます。選んだら結果を見て、また最初に戻ります。

デモ1:期待値と、リスクの好み

期待値は、「確率×利益」を結果ごとに出して足したものです。同じ判断を何度も繰り返したときの、平均的な利益だと考えてください。デモの「広告を出す」は、当たれば大きいものの、外れたときの損も大きい選択肢です。期待値だけで比べると最も高いのですが、損失を重く感じる人(慎重)の物差しに変えると、大きな損の可能性がある分だけ評価が下がり、安定した「据え置き」が選ばれます。この物差しを効用と呼びます。

つまり、同じ数字を見ても、選ぶ答えは「どこまでの損なら許せるか」という好みで変わります。さらに「景気の見通し」を変えて確率が動くと、答えも動きます。AIが出す答えは、確率の見積もりと、損得の物差しの2つに支えられています。

デモ2:強化学習と、探索と活用

連続した判断では、1つの選択が次の状況を変えます。このとき使われるのが強化学習です。やり方は、行動して、結果の報酬(得点)を受け取り、「その場所でその行動をとる価値」の見積もり(Q値)を少しずつ直す、という繰り返しです。地図も正解も教わらず、試行錯誤だけで道を見つけます。マスの色はそのマスの価値、矢印は価値が最も高い向きです。

ここで大事なのが探索と活用のバランスです。活用ばかりだと、最初に見つけた遠回りの道に居座ります。探索ばかりだと、せっかく見つけた良い道を使えません。そこで、εの確率でランダムに試し、残りは今いちばん良い行動を選びます。εを0.05にすると迷いが少なく、0.5にすると回り道が増えて得点がばらつきますが、どちらも学習が進むと、棚と減点マスを避けた道に矢印がそろいます。

デモ2の減点マスは、近道の途中に置いてあります。通れば歩数は少なくなりますが、−20点です。ロボットは「ぶつからないように」と教わったのではなく、点数を最大にするという目的だけで、遠回りを選ぶようになります。報酬の決め方が、そのまま行動の方針になります。

LLMを使ったAIエージェントとの関係

ChatGPTやClaudeのようなLLM(大規模言語モデル)を使ったAIエージェントも、「次に何をするか」を選んで動く点は同じです。メールを読む、資料を検索する、どのツールを使うかを決める、といった判断を重ねます。ただし、LLMが選ぶときの中身は、デモのような数式の計算だけとは限りません。文脈から言葉として答えを組み立てる部分が大きいです。それでも、「状態を見て、選択肢を挙げ、結果を予測し、評価して選ぶ」という枠組みで考えると、エージェントが何をしているのか、どこに見積もりの誤りが入りうるのかを整理しやすくなります。

決定木分析とは別のものです

名前が似ているので注意が必要です。デモ1の枝分かれ図は、決定木と呼ばれる形をしていますが、これから取る行動を選ぶための図です。一方、決定木分析は、過去のデータから分類のルールを作る機械学習の手法です。前者は「どの行動が得か」を、後者は「このお客様はどちらのグループか」を答えます。

使うときの注意点

中小企業での使いどころ

強化学習を自社で一から作る必要は、ほとんどありません。まずは期待値で比べる考え方を、日々の判断に取り入れるのが現実的です。

まずは、確率と利益の見積もりを表にして、期待値を出すだけでも効果があります。「なんとなく」で決めていた判断の根拠が、数字で残るからです。そのうえで、AIエージェントに任せる範囲は、間違えたときの損が小さいものから広げてください。

ご相談

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富田 良治

富田 良治(とみた よしはる)

TITC合同会社 代表社員

AI経営コンサルタント。中小企業診断士・ITストラテジスト。元ITエンジニアで駄菓子屋オーナー。 プロフィールを見る