BLOG · AI入門・AIエージェントの仕組み
「選択肢を並べ、結果を見積もり、評価して選ぶ」流れを、期待値と試行錯誤の2つで確かめる
AIエージェントが動くとき、中では「次に何をするか」を選ぶ処理が繰り返されています。その考え方が意思決定モデルです。状態を見て、選択肢を挙げ、結果を予測し、評価して、選ぶ。この記事では代表的な2つ、期待値で選ぶ(1回の判断)と、試行錯誤で学ぶ(強化学習、連続した判断)を、動かして確かめます。
お店の来月の打ち手を、AIが選ぶ場面です。「1ステップ進む」を押して、①〜④を順に見てください。そのあと「リスクの好み」と「景気の見通し」を切り替えると、選ぶ答えが変わることがあります。
枝の太さは確率です。「期待値」は、確率と利益を掛けたものを結果ごとに出して、足したものです。景気の見通しは、「客が増える」確率と「客が減る」確率を入れ替えます。
倉庫で、配達ロボットが荷物置き場(ゴール)まで荷物を運びます。ロボットは地図を持たず、動いてみた結果の得点(報酬)だけを頼りに、少しずつ上手になります。これが強化学習の一つ、Q学習です。「再生」を押して、ロボットの動き、マスの色、矢印の変化を見てください。
黄色い四角=ロボット/青いマス=先で得点が見込める場所/赤いマス=減点が見込まれる場所/矢印=今いちばん良いと思っている向き
得点=歩くたびに−1、減点マスで−20、ゴールで+50。少ない歩数で、減点マスを避けて着くほど高得点です。
「探索」は、あえてランダムに動いてみること、「活用」は、今いちばん良いと思う向きに進むことです。εは、探索する割合です。最初は迷い続けますが、学習が進むと、棚と減点マスを避けた最短に近い道を選ぶようになります。
意思決定モデルとは、「いま何をするか」を選ぶまでの筋道を、数字で表したものです。どんな形でも、おおむね次の流れになります。
期待値は、「確率×利益」を結果ごとに出して足したものです。同じ判断を何度も繰り返したときの、平均的な利益だと考えてください。デモの「広告を出す」は、当たれば大きいものの、外れたときの損も大きい選択肢です。期待値だけで比べると最も高いのですが、損失を重く感じる人(慎重)の物差しに変えると、大きな損の可能性がある分だけ評価が下がり、安定した「据え置き」が選ばれます。この物差しを効用と呼びます。
つまり、同じ数字を見ても、選ぶ答えは「どこまでの損なら許せるか」という好みで変わります。さらに「景気の見通し」を変えて確率が動くと、答えも動きます。AIが出す答えは、確率の見積もりと、損得の物差しの2つに支えられています。
連続した判断では、1つの選択が次の状況を変えます。このとき使われるのが強化学習です。やり方は、行動して、結果の報酬(得点)を受け取り、「その場所でその行動をとる価値」の見積もり(Q値)を少しずつ直す、という繰り返しです。地図も正解も教わらず、試行錯誤だけで道を見つけます。マスの色はそのマスの価値、矢印は価値が最も高い向きです。
ここで大事なのが探索と活用のバランスです。活用ばかりだと、最初に見つけた遠回りの道に居座ります。探索ばかりだと、せっかく見つけた良い道を使えません。そこで、εの確率でランダムに試し、残りは今いちばん良い行動を選びます。εを0.05にすると迷いが少なく、0.5にすると回り道が増えて得点がばらつきますが、どちらも学習が進むと、棚と減点マスを避けた道に矢印がそろいます。
デモ2の減点マスは、近道の途中に置いてあります。通れば歩数は少なくなりますが、−20点です。ロボットは「ぶつからないように」と教わったのではなく、点数を最大にするという目的だけで、遠回りを選ぶようになります。報酬の決め方が、そのまま行動の方針になります。
ChatGPTやClaudeのようなLLM(大規模言語モデル)を使ったAIエージェントも、「次に何をするか」を選んで動く点は同じです。メールを読む、資料を検索する、どのツールを使うかを決める、といった判断を重ねます。ただし、LLMが選ぶときの中身は、デモのような数式の計算だけとは限りません。文脈から言葉として答えを組み立てる部分が大きいです。それでも、「状態を見て、選択肢を挙げ、結果を予測し、評価して選ぶ」という枠組みで考えると、エージェントが何をしているのか、どこに見積もりの誤りが入りうるのかを整理しやすくなります。
名前が似ているので注意が必要です。デモ1の枝分かれ図は、決定木と呼ばれる形をしていますが、これから取る行動を選ぶための図です。一方、決定木分析は、過去のデータから分類のルールを作る機械学習の手法です。前者は「どの行動が得か」を、後者は「このお客様はどちらのグループか」を答えます。
強化学習を自社で一から作る必要は、ほとんどありません。まずは期待値で比べる考え方を、日々の判断に取り入れるのが現実的です。
まずは、確率と利益の見積もりを表にして、期待値を出すだけでも効果があります。「なんとなく」で決めていた判断の根拠が、数字で残るからです。そのうえで、AIエージェントに任せる範囲は、間違えたときの損が小さいものから広げてください。
在庫や値引きの判断を数字で整理したい、AIエージェントにどこまで判断を任せてよいか知りたい——そうした相談は、AIエージェント自走化プログラムまたはお問い合わせからどうぞ。