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BLOG · データ分析入門・統計
中心極限定理をアニメーションで理解する
どんな形のデータでも「平均」を集めると釣り鐘形になる理由を、動かして確かめる
公開日 / 著者 富田 良治(TITC合同会社 代表社員)
中心極限定理(ちゅうしん きょくげん ていり)は、もとのデータがどんな形でも、n個ずつ取り出した「平均」をたくさん集めると、その分布は釣り鐘形(正規分布)に近づき、ばらつきの幅は 1/√n に縮むという法則です。アンケートや売上の平均に「どれくらいの誤差があるか」を見積もる、統計の土台になっています。下のデモで、釣り鐘ができあがる様子を見てみましょう。
中心極限定理とは
たとえば、サイコロを1回振ると、1〜6のどれが出るかは同じ確率で、グラフにすると平らです。ところが、サイコロを5個振ってその平均を記録することを何百回も繰り返すと、「3.5前後が多く、両端は少ない」山の形になります。
これは、サイコロに限りません。右に偏った「待ち時間」でも、山が2つある「ふた山」のデータでも、平均を集めると、同じ釣り鐘形に近づきます。しかも、平均の山の幅は、1個ずつのばらつき(標準偏差 σ)の 1/√n になります。この法則が中心極限定理です。
動かして確かめる
上段が「もとのデータの分布(母集団)」、下段が「n個の平均」の積み上がりです。「再生」を押すと、上段からn個の点が取り出され(中段)、その平均(黄色い▼)が1個の玉になって下段に積み上がります。時間がかかるときは「早送り」で一気に数百回進めてください。
もとの分布
標本サイズ n(1回に取り出す個数)
試行回数:0 回
標本平均の平均 実測 - / 理論 μ = -
標本平均のばらつき(標準偏差) 実測 - / 理論 σ/√n = -
上段:もとの分布(点線は平均 μ)/中段:取り出したn個の点と、その平均(▼)/下段:平均の積み上げ。下段の横軸は、nが大きいほど平均付近に拡大して表示します。
デモで確かめてほしいこと
- nを1から30へ変えてみる。n=1 は平均を取っていないので、下段はもとの分布とそっくり同じ形です。nを増やすほど、形が釣り鐘に近づきます。
- 「ふた山」でも試す。もとのデータに山が2つあっても、5個、10個と平均すると、山が1つの釣り鐘に変わります。
- 「購入額(ロングテール)」で試す。一部の高額購入で右に長く伸びるデータは、n=5 や 10 ではまだ右に偏ります。釣り鐘になるまでに、より大きなnが必要です。
- ばらつきの数値を見る。実測の標準偏差は、理論の σ/√n とほぼ一致します。nを4倍にすると幅は半分になります。つまり、データを4倍集めると、平均の誤差は半分になるということです。
- 「理論の釣り鐘を重ねる」を押す。積み上がった玉と、赤い曲線が重なっていく様子を確かめてください。
仕事での使いどころ
- アンケートや売上の平均に「誤差の目安」をつける。平均値のぶれの大きさは、おおよそ σ/√n で見積もれます。「平均の前後このくらいの幅に収まりそうだ」と、数字で言えるようになります。
- 品質管理の管理図。製造や検品で、数個ずつ平均を取って記録し、「ふだんのぶれの幅」から外れたら異常を疑います。平均が釣り鐘になる性質が、この判断の土台です。
- A/Bテストやキャンペーン効果の比較。2つの案の平均の差が、たまたまのぶれなのか本当の違いなのかを判断するときに使われます。
- 必要なサンプル数を決める。誤差を半分にしたいなら、データは4倍必要、といった見積もりができます。調査の規模や費用の判断に役立ちます。
使うときの注意点
- データが互いに独立であることが前提です。同じ人の回答を何度も数える、似た条件ばかりを集めるといった偏りがあると、この法則は当てはまりません。
- 極端な外れ値が多いデータでは、収束が遅くなります。デモの「購入額(ロングテール)」がその例です。さらに、少数の大口が売上の大半を占めるようなデータでは、平均そのものが実態を表しにくくなります。中央値なども合わせて見ましょう。
- 「n=30 で十分」は、あくまで目安です。もとの形が整っていれば30より少なくても足り、偏りが強ければ30でも足りません。
- 釣り鐘になるのは「平均の分布」であって、もとのデータではありません。購入額のもとのデータが、平均を取る前から正規分布になるわけではありません。
まとめ
中心極限定理は、「もとの形が何であれ、平均を集めれば釣り鐘になり、幅は 1/√n に縮む」という法則です。個々のデータは予測できなくても、平均なら誤差の大きさを見積もれる——これが、統計で平均値が多用される理由のひとつです。
富田 良治(とみた よしはる)
TITC合同会社 代表社員
AI経営コンサルタント。中小企業診断士・ITストラテジスト。元ITエンジニアで駄菓子屋オーナー。 プロフィールを見る